ひだまりHoney
体が逃げようとした瞬間、大田原さんの手を、違う手が制止する。
その手の先に紺野さんの気遣わしげな顔が見えた。
「どこかに座って、少し落ち着いた方が良い」
エレベーターから降りれば、乗り込もうとしていた数人の男性が立っていてた。
じっと見下ろしてくるその目に、息苦しくなった。
俯けば、体の横に紺野さんのジャケットが見えた。
手を伸ばし、青みの入ったグレーの生地をぎゅっと掴んだ。
「あっち行こう」
肩を軽く叩いた温かな手に励まされ、私は一歩ずつ歩き出す。
「少し待てば人も捌けてるだろうし、大人しく座ってなさい」
辿り着いたのは自販機前の長いすだ。言われた通りに、腰を下ろした。