ひだまりHoney
停車し開いた扉を数人が行き来する。その辺りをぼんやりと眺めていた紺野さんがぽつりと呟いた。
「家まで送っていきたいところだけど、ピースの飯があるし」
ハッとし駅名に目を向ける。
次の駅で、紺野さんが電車を降りる。もうすぐサヨナラだ。
手を繋ごうと言われた意味を理解すれば、急速に寂しさが込み上げてくる。
「だ、大丈夫です! まだ九時前ですから」
言葉に反して、私は繋いだ手に力を込めてしまった。
「明日、何時に待ち合わせしますか?」
明日になったらまた会えるのに。別れるのが辛い。
「そうだな……」
走り出したばかりの電車のスピードが、また落ちていく。
窓の外に見慣れたホームが現れ出れば、紺野さんが鞄を持ち直した。
そして停車した瞬間、彼は立ち上がり歩き出す。
「わっ。ちょっ、紺野さん!」
私の手を繋いだまま、彼は電車を降りた。