ひだまりHoney
私は深呼吸を一度挟んでから、言葉を紡いだ。
「あの時、なんで私の名前知ってるのかって……ちょっとだけ怖かったんですけど、ホッとしました。同じ会社の方だったんですね」
彼の表情がちょっと強ばったのに気がついて、私は慌てて口を閉じた。
これからこの人の下で働くというのに、余計な事を言ってしまっただろうか。
「お先に」
「えっ。あの」
不安に駆られ黙り込むと、大田原さんがお腹を抱え、そして肩も震わせながら、ミーティングルームへと入っていった。
「あのさ、平加戸さん」
「はいっ!」
「それって俺のこと、見覚えすらなかったってこと? 俺たち、エレベーターの中で結構挨拶を交わしてるはずなんだけど」
「えっ?」
「えって、本当にないのかよ!」