理想の恋愛関係
「……詳しい事は言えませんが、心に決めた相手が居るんです。
私はもう見合いをする気は有りませんから、袋小路さんも別の人を探した方がいいと思います」


言い返す隙を与えないよう一気に言う。


袋小路さんは、呆然と私の口元を見ている。


少しキツく言い過ぎたかと思ったけれど、こういう事ははっきりさせた方がお互いの為だ。


曖昧な態度が一番良くない。


私はフォローする事もなく、袋小路さんを冷たく睨んだ。


「……そう言われる気はしてました」


しばらくすると袋小路さんは、肩を落としながら言った。


「多分無理だろうと思ってたけど、もしかしたらと思って……」

「申し訳有りませんが……」


そういう事でと席を立とうとしたけれど、袋小路さんはぶつぶつと話し続けた。


「栖川さんの事が忘れられなくなったんです」

「……」

「今頃どうしているのかって気になって……なんで見合いを断ってしまったんだろうって後悔して……」


……しつこい。


まさか、この愚痴っぽい告白をずっと聞かすつもりなのだろうか。


「だから望みはなくても、何もしないで後悔したくなかったんです」


……あれ?


「行動しないで、悩んでいるだけじゃ駄目だと思って……」


この状況……なんだか覚えが。


「どうしても駄目ですか? 少しだけでもチャンスは無いですか?」


袋小路さんの熱心な眼差し。


これは……過去の私だ。


優斗君に1ヶ月だけでもいいから付き合ってくれと迫った頃の私自身。


……立場が逆になると、こんなに迷惑な事だったんだ。


当時の優斗君の気持ちを思うと、ガックリと力が抜けた。
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