理想の恋愛関係
早足で歩きながら、気持ちを落ち着かせようとする。


でも出来なかった。


ホテルで喧嘩なんて言われて、平常心で居られる方がどうかしている。


そこまで考えてハッとした。今、自分が苛立ち怒っているのは嫉妬から来るものだと不意に気がついた。


緑に嫉妬?


自分でもすぐには信じられない事だったけれど、間違いようの無い事実だった。


神原龍也が、緑と呼び捨てにするのを聞いてムッとした。


そして付き合っていたと聞いて、更にイライラとした。


明らかに嫉妬の感情。


そして嫉妬すると言う事は、緑に対して独占欲を持っていると言う事。


ただの友人以上の気持ち……気付いてしまった現実に動揺した。


まさか、今更こんな気持ちになるなんて。


今まで緑と過ごした日々の想い出が浮かんでは消えて行く。


初めは仕方無く付き合っていた。


けれどいつの間にか、緑の明るさや逞しさに元気を貰っていた。


そして今では……側に居るのを当たり前に感じるようになっている。



優斗は立ち止まり、直ぐ後ろを付いて来る緑を振り返った。


さっきまでイライラと眉間にしわを寄せていた緑は、今はそんな面影は微塵も無く、幸せそうな笑みを浮かべていた。
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