理想の恋愛関係
緑に近付き声をかけた。


緑は余程驚いたのか、不思議な位うろたえていた。


それから、緑と同時に振り向いた男性に目を向けて、今度は自分が驚いた。


見知った顔だった。


神原龍也。


取引先の担当者で、何度か挨拶をした事が有る。


偶然にも緑と知り合いだと言っていた。


その彼が、なぜここにいるのだろう。


「二ノ宮さん、こんな所でお会いするとは思いませんでした。今日は緑と待ち合わせですか?」


神原龍也は優斗が何か言うより早く、話しかけて来た。


顔は笑っているけれど、なぜか敵意を感じる。


それに、緑の事を呼び捨てにしている事も気になった。


ただの知人では無いのだろうか。


弁解するような緑の様子からも二人の関係は想像出来た。


緑は神原龍也と……考えると不快になった。


「緑がボンヤリ立っていたから話しかけたんですよ。緑から聞いていると思いますが、俺達付き合ってたんで」


神原龍也の口からはっきり聞くと、更に苛立ちが増していった。


自分よりも年上の緑に恋愛経験が無い訳が無い。


その相手が神原龍也だとしても不思議は無い。


それなのに、二人を目の当たりにするとイライラが抑えられなくなった。


「緑とはホテルで喧嘩別れしたきりだったけど、最近仕事の関係で再会したんです」


顔に出さないように努力しているのに、神原龍也はわざと言ってるのか更に怒りを誘うような事を言う。


とにかく冷静になるには、神原龍也を遠ざけるのが先だと思った。


今にも怒鳴り散らしそうな緑を止め、神原龍也を適当にあしらう。


それから緑の手を引きその場から立ち去った。
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