理想の恋愛関係
居酒屋に入ってからも、優斗君は普段と何ら変わりは無かった。


料理を頼み、お酒を飲んで近況報告。


更に不思議そうに私を見ながら言う。


「緑さん、今日は少食だな」


そりゃあそうに決まってる。


私は不完全燃焼になってしまったさっきの出来事が気になって気になって仕方ないのに。


それでも何となく言い出せずに、結局食事は終わってしまった。




夜の街を優斗君と駅に向かって歩く。


ゆっくり歩いても、もう着いてしまう。


このお預けを食らったような状況についに耐えられなくなった私は、立ち止まり優斗君に思い切って切り出した。


「優斗君!」


力を入れすぎたせいか大きな声が出てしまった。


「どうしたんだ?」


優斗君は怪訝な顔をして私を見る。


「あの、さっきの話なんだけど……その、私の事好きだって言ってくれたでしょ?」

「ああ」


優斗君はあっさりと頷く。


「それで……その事でいろいろ話したくて……」


私達は両思いで恋人同士になったんだと、確認したかった。


優斗君の口から聞きたい。


今のままじゃ不安過ぎた。


私の必死の訴えに、優斗君は少し驚いた顔をしながらも頷いてくれた。


「俺もちゃんと話したくて、少し寄り道して行かないかって言おうと思ってたんだ」

「え?」

「そこの公園で話さないか?」


優斗君が目を向けたのは、広々とした公園。


大きな池や沢山のベンチも有って、夜でも人通りは少なくない。


よく恋人同士と思われる男女が歩いているのを見た事が有った。

< 301 / 375 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop