理想の恋愛関係
日曜日、最高にウキウキしながら支度を整えた。


具体的にどこに行くかは話し合ってないけれど、お洒落な店に行っても恥ずかしくないシックなワンピースにした。


優斗君は約束の時間より、少し早く来てくれた。


部屋を飛び出してエントランスに行くと、笑顔の優斗が待っていた。


白いシャツが爽やかで、なんだかますます好きになってしまう。


「優斗君、お待たせ」

「少し早かったけど、大丈夫だった?」

「大丈夫、気にしないで」


一時間以上前から準備万端だったから、何の問題もない。


むしろ早く会えて嬉しい。


「緑さん、どこか行きたいところは?」

「えっ? 私はどこでも……」


いいと言いかけてハッとした。


以前、どこかで読んだ雑誌にデートの行き先を男任せにする女はつまらないと書いて有った。


当時は、そんな事言う男こっちから願い下げだと思ったけれど……そんな強気な私は今はいない。


何か言わなくちゃ……優斗君も楽しめるお洒落でセンスの良い大人な雰囲気の行き先を……。

散々悩んだくせに、


「え、映画とか?」


口から出た台詞は自分でもビックリする平凡なもので、

「映画か……」

優斗君も全く感動なく呟いた。


そりゃあ、何のひねりも無い誰もが普通に行くところだし。


こんな事なら、昨夜の内から考えておけば良かった。


優斗君と出かけられる事が嬉しくて、行き先はどこでもいいと思ってしまっていた。

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