理想の恋愛関係
私と鈴香をじっと見つめるのは、どこにでも現れる男、龍也だった。


「げっ……」


思わず声に出してしまうと、鈴香が怪訝な顔をして私の視線を追った。


「……店変える?」


鈴香は一瞬顔を強張らせてから、私に向き直り言った。


「もう遅いみたい」


私は心底うんざりして言った。


視界の端に龍也が歩み寄って来る姿が見えた。




拒絶のオーラをこれでもかってくらい出しているのに、龍也は全く気にした様子も無く私達のテーブルのすぐ前に立ち止まった。


私が無視していると、

「神原さん、こんばんは」

鈴香が営業用の笑顔で言った。


龍也は満足そうに頷いた。


「二人とこんな所で会うとは思わなかったな。驚いたよ」


私だって、驚いた。
内心、ストーカー? とすら思った。


けれど、龍也のテーブルのメンバーを見る限り本当に偶然のようだった。
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