理想の恋愛関係
「今日は二人だけなのか?」


二人だけってところを、やけに強調していた気がする。


余計なお世話だと思う。


うんざりしていると、鈴香が作り笑いを浮かべながら言った。


「今日は女同士で飲もうって事で来たから……それより神原さんは戻った方がいいんじゃないんですか?」


鈴香の目線の方向には龍也が元々居た席が有って、そこには数人の男女が妙にテンション高く会話を交わしていた。


雰囲気からして合コン……ネイルサロンのオーナーと付き合っているとか言いながら、相変わらず自由に遊んでいるようだった。


私は呆れた思いで龍也を見た。


チラッと軽蔑の視線を送ろうと思っただけなのに、最悪な事に目が合ってしまった。


龍也はそのチャンスを待っていたかの様に、話しかけて来た。


「緑、二ノ宮さんはどうしたんだ?」

「……龍也には関係ないでしょ」


淡々とそう答えたけれど、内心は最高にイライラとしていた。


今、最も触れられたくない話題だと言うのに!


龍也のにやけた顔が、余計に怒りを煽る。


「喧嘩でもしたのか?」


ああ、煩わしい。


無視をしてワイングラスに手を伸ばすと、龍也の機嫌良さそうな声が聞こえて来た。


「だから、二ノ宮さんは止めろって言っただろ? こんな風に女同士で飲んで虚しくないのか?」


……虚しい?


確かに寂しくて虚しくて、苦しいけど龍也に馬鹿にされる筋合いは無い。


「毎日がつまらないだろ? 二ノ宮さんは止めて違う男を探したらどうだ? 良かったら紹介するぞ」

「ち、ちょっと神原さん、かなり酔ってるでしょう?」


しつこく絡んで来る龍也に、鈴香が非難するように言った。


それでも龍也は止まる事なく、余計なお世話としか思えない事をペラペラ語る。


「最初から、あの男は気に入らなかったんだ。
コネで就いたポストなのに偉そうに……」


ついには優斗君の悪口まで。


もう、我慢ならない!


忍耐の限界を超えたのを感じながら、私はゆっくりと立ち上がった。
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