理想の恋愛関係
ゆ、優斗君のお母さん?


え……どうしてお母さんが私に電話を?


いや、それよりこの状況かなりのピンチなんじゃ。


非常識とか言ってしまった気が……。


ど、どうしよう。


どうやってフォローしよう。


今さっきの出来事を帳消しに出来るような、素晴らしい言葉が有ればいいのに。


でも必死に考えたけれど、思いつかない。


焦る私に、お母さんは弱々しい声をかけて来た。


「あの、緑さん?」

「あっ、はい。あ、あの……お久しぶりです。あの……先程は失礼な事を言ってしまいすみませんでした」


もう誤魔化す事は諦めて謝り通すしかない。


必死で謝罪する私に、お母さんは、かなりの沈黙の後、淡々と言った。

「さっきの……緑さんは早口だから聞き取れなかったわ」


は、早口で聞き取れなかった?


予想もしていなかった返事に、私はかなり困惑した。


お母さんの真意が分からなかった。


私に気を遣わせない為に、聞き取れなかったと言ってくれたのか。


それとも、本当に聞こえなかったのか。

でも……それは無い気もする。

だって、普通の日本語だったし。


やっぱり思いやりなんだ。


そう思うと、なんだか感動が込み上げて来た。


その優しさに、私も応えなくては。



「あの、今日はどうなさったんですか? 何か問題が有ったんですか?」


出来るだけ穏やかさを心がけて言う。


お母さんがわざわざ私に電話して来たのは、何か相談が有るんじゃないかと思った。


お母さんはまた長い間黙っていた。


忍耐強く待っていると、それは小さな声で言った。


「優斗の様子がおかしいの」
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