いとしのくまこさん
「そろそろ行きましょうか。車出してきます」


「うん、わかった」


伊吹くんは篠崎さんに礼を言うと、そそくさと部屋を後にした。


「カオルコちゃんさ、どう、あの子」


「え?」


「けっこう彼、オトコマエだし」


「五つも年下ですよ」


「意識してんじゃないの。カオルコちゃん、色っぽくなったし」


「もう冗談よしてくださいよ」


「恋のはじめってこんな感じかなあと思って」


「風邪のひき始めみたいなこと言わないでください」


「まあ、かわいらしいわ」


目の前に置かれたお茶を飲む。すきっ腹に緑茶は少々胃がしみる。
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