いとしのくまこさん
「いいんですか。追いかけなくて」


「いいの」


「だって、熊井さん、部長のこと」


「好きじゃないの。最初からそういう関係じゃないの」


「それでいいんですか。相手のこと、まだ好きなんでしょう」


「いい歳こいて、未練がましいのはね」


「どうして我慢するんですか」


「もうとっくに終わってる。バラすなら誰でもどうぞ。もう社内じゃあ噂の的だったわけだし」


手の中にはリングと茶色のクマがいる。


踏まれた跡で黒ずんでしまい、右腕がとれかかっている。
< 65 / 73 >

この作品をシェア

pagetop