魅せられて
第三章余韻


相変わらず
私が”さようなら”を
告げた男からの
着信履歴がない


引地に「彼氏居るのか?」と
聞かれてから
忘れ掛けていた存在を
意識し始めていた


コンパで知り合った男


”諸橋 晃一”


無愛想な男ではないけれど
冷たさを感じる男だった


言葉を変えれば
冷静沈着とも
言えなくもないが


愛されているのか
実感すら湧かず


甘い囁きもなく
所有物のように
扱われてきた


喧嘩した記憶もなく
小さな食い違いは
諸橋の定義に寄って
解決されてしまう


女友達の誘いを
断り始めたのも


ただ一言


「行く意味がないだろ?」


何故だか私自身も
納得していた気がする


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