魅せられて


結婚願望がないのか
友人の結婚式へ
一緒に出席した時も


友人の花嫁姿に
興奮して舞い上がる私を
現実に引き摺り下ろしたのは
諸橋の言葉だった


「明日 早いから帰るよ」


何件も店を探し歩き
奮発して購入したドレスも
数日掛けて 磨いた肌も


引き出物の大きな袋を
片手にぶら下げた
ただの女に摩り替わっていたわ


結婚したい訳じゃないけれど
同じ女性として
祝福される友人と
路上に置き去りにされる私


惨めに泣いたのは
あの時が 
初めてだった


それでも私は
諸橋と別れようともせず
惰弱的な恋人でいたの


胸を踊らせる恋愛に
興味を失っただけ


泣き崩れる恋愛にも
面倒臭くなっていたのよ


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