理想の恋愛
「そこのバカ…、実が帰ってこないから様子を見に来たんですよ。」
「おい! 誰がバカだ!?」
「うわぁん! 実が帰ってこないから心配だったんだよぉ」


 俺と秀の問答を傍らに麗が俺に飛びついてくる。


「ったく、麗ちゃんが実が帰ってこないってずーっと心配してたんだからな…」
「挙句の果てにはこの子泣き出すし…。こっちもなだめるの大変だったんだからね!?」
「事情は分かったから、早くこいつを引き離してくれ…」


 和磨と明香がため息交じりに苦労を語るが、今の俺はそれどころではない。麗に飛びつかれて後ろに倒れこみ、麗に上にのしかかられているのだ。まずい…、また意識が。


「はぁ、とりあえず麗ちゃんは無事に送り届けたからな…」
「俺らは先に教室戻っておくから、お前も早く戻ってこいよ」
「んじゃ、そういうことだから! 麗のことよろしくねー!」

 俺の事など目もくれず秀、和磨、明香の三人は先に保健室を後にする。


「お、おい! この薄情者どもー!!!」


 保健室には俺の悲痛な叫び声だけが残っていた。
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