理想の恋愛
「そうか、じゃあ、俺もそろそろ帰るわ」


そういって帰ろうとすると

「あ、待って!」

突然麗が腕をつかんで止めてくる。


「うぉお!」


あわてて腕を振りほどく
止めるのはいいとしてもつかまれるのは困る。

「なんだよいきなり?」
「今日、家に泊まっていかない?」

何を言い出すんだこいつは・・・。

「はぁ?
なんだよ急に」
「今日、お父さんも帰ってこないから一人なんだ」

だからなんだというのだ。
小学生じゃあるまいし、一人でも何の問題もないだろう。

「そんなこと急に言われたって俺着替えとかもなんも持ってきてないし」

大体、思春期まっただ中の男子高校生と女子高校生が二人っきりでお泊りってなんだよ?


「じゃあ、今から取りにいこ!」

おいおい。
何故にそこまでして俺を引き留める。

「大体、麗のお袋さんの許しも取ってないのに・・・」
「ママならOKしたよ?」


ちょっと待て。
お前はいつの間に確認を取ったんだ?

っていうか、なんで麗のお袋さんも許可するんだ?
意味がわからん。

そんなことを思いつつも決して口にはださない。
なぜならこの家庭では常識が通じないのは100も承知だからである。

そして俺は確信していたこうなったら俺はもうここに泊まる以外の選択肢がないということも。

「はぁ・・・。
わかったよ。じゃあ着替え取りに行くぞ。」


そういうとさっきまで少し沈んでいた麗が一気にもとに戻った。

「やったー!
そうと決まったら早く行こう!」

そういうと、麗は俺の腕をつかんで思いっきり引っ張ってくる。

「っ!
だからつかむなって!」

そんなやり取りをしながら俺と麗は水無月家を後にした。
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