嘘つきな唇
企画案を開いて頭の中で電卓をはじいていく。

それから数時間、紗綾はブツブツと企画と計算を繰り返し呟いているところで、横に置いてあるスマホが振動した。

スライドさせて中を確認して、思わず口元が緩む。

時間を確認して、パソコンの電源を落とすと急いで更衣室に向かった。



******

人目を惹く容姿だとはよく言われる。

紗綾自身も自覚しているし、そういう努力は怠らない。

仕事もおしゃれも、そして恋愛も。
いつだってうまくいくように一生懸命努力している。



「ごめん、待たせたな」

紗綾は見ていたスマホから顔を上げ、彼女の目の前に座った彼ににっこりと微笑む。

「ううん、大丈夫。私もほんの少し前に来たところだから」

そう言いながら、彼──伊沢 蒼士にメニューを手渡した。

会社の最寄り駅から一駅先にあるカフェで待ち合わせて、コーヒーを一杯飲んでからどこか適当なレストランに移動して食事をする。

最近すっかり定番になりつつある二人のデートスタイル。





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