ナギとイザナギ
 僕と大地がうとうとしかけた夜半過ぎ、さぎりの部屋で物音がした。
 つづいて、さぎりの悲鳴が。ただごとじゃない。
 僕は金属バットを手に、部屋へ殴りこんだ。
 窓は全開になっており、ピンクのかわいらしいカーテンは強風にあおられ、はげしく揺れていた。
 不意打ちをしたからか、部屋はさほど荒れておらず、侵入者はさぎりを羽交い絞めにし、束縛していた。
「たすけて、イザナギさん」
 さぎりはか細い声で助けを呼んでいた、だがイザナギさんは気を失って倒れている。
「さぎり、いま、助けるからなっ」
「いつかの坊やだね、あいにくだけど、あなたに勝ち目はないのよ。イザナギでさえ、あたしの敵じゃなくなったんだから」
「なにっ。どういう意味だ」
 返事代わりのつもりか、台風並みの突風が吹き荒れて、僕は吹き飛ばされ、壁に身体を打ち付けてしまう。
「いやあっ、ナギッ」
「ほほほ、殺しはしないよ。ナギといったね。よく見ると、ツクヨミの幼い頃によく似ていること。ツクヨミは私の長男だけど、いまじゃ夜を治める王様さ。それはそうと、さあいくよ、小娘。あんたは目障りだ。消させてもらう」
「消すって。どうする、気」
 さぎりの意識を魔法か何かで眠らせ、イザナミは窓から姿を消してしまった。
「ま、待てッ」
 あとを追おうと起き上がるが、全身に痛みが走り、がっくりと膝をついた。
「イザナギさん、イザナギさん。さぎりが、さぎりが」
 そして、目の前が真っ暗になった。   
 
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