ナギとイザナギ
「困ったことになってしまった」
気がつくと、額の血をぬぐいながら、イザナギさんがうなだれている姿を視界で捉えた。
「あ、たいへんだ。さぎりがイザナミにさらわれたよ」
「取り返しのつかないことになってしまった。俺じゃイザナミにかなわなかったんだ」
「なっ、なんだって。それじゃ、さぎりはどうなるの」
イザナギさんは、ゆっくりと頭を振った。
「方法がないわけではない。だが、あまり気は進まない」
「そんなこと、言ってる場合かよ。さぎりの身に何か起こったら、どうするんだよ。イザナギさんは神様だろ、なんとかしてよ」
「わかっている」
イザナギさんは、のっそり立ち上がると、大地のほうへ歩いていった。
「な、なにっ」
「は。何か始まるってのか」
「それが」
イザナギさんは、大地の正面で手をかざし、何事かぶつぶつと呟いた。
「解放、これでよし」
大地は一瞬だけ目を閉じていたが、次の刹那、両目を丸く広げて叫んだ。
「あんた、だれだ。もしかして、イザナギさんか」
「いかにも」
イザナギさんは、あまり笑わず、この行動に気乗りしてないようだった。
「よかったな、大地にもイザナギさんが見えるんだ」
「ああ。なんか、うれしいよ。ナギとさぎりにだけ見えて、おれには見えなかったんだぜ、そのイザナギさんがおれの目の前にいるなんてよ。興奮するなって言うほうが無理だろ」
まあ、熱血漢の大地のことだ。こうして騒ぐことくらいわかってはいたが、うるさい。
「話は後だ。さぎりを助けに行く。それには、大地。おまえの家に祀られている家宝の剣があるはず。それを貸して欲しい」
「家宝の剣だって、そんなのあったかな」
「その剣がないと、さぎりを救えないんだ。持ってきてくれ、早く」
大地は思い出そうとしているようだが、記憶があやふやのようだった。頼りないなぁ。
「よく思い出せないんだよなぁ。かあちゃんにでも聞いてみる」
「イザナギさん。僕たちも行ったほうが早いんじゃないの」
「いや、俺は、あの家に入るのは、ちょっと好きじゃない」
と、この期に及んでまだいうのか、この男はっ。
「だからぁ、そういうこと言ってる場合じゃないでしょっ。いくよ」
無理やり引っ張って、ようやくイザナギさんと3人で大地の家に向かうのだった。
気がつくと、額の血をぬぐいながら、イザナギさんがうなだれている姿を視界で捉えた。
「あ、たいへんだ。さぎりがイザナミにさらわれたよ」
「取り返しのつかないことになってしまった。俺じゃイザナミにかなわなかったんだ」
「なっ、なんだって。それじゃ、さぎりはどうなるの」
イザナギさんは、ゆっくりと頭を振った。
「方法がないわけではない。だが、あまり気は進まない」
「そんなこと、言ってる場合かよ。さぎりの身に何か起こったら、どうするんだよ。イザナギさんは神様だろ、なんとかしてよ」
「わかっている」
イザナギさんは、のっそり立ち上がると、大地のほうへ歩いていった。
「な、なにっ」
「は。何か始まるってのか」
「それが」
イザナギさんは、大地の正面で手をかざし、何事かぶつぶつと呟いた。
「解放、これでよし」
大地は一瞬だけ目を閉じていたが、次の刹那、両目を丸く広げて叫んだ。
「あんた、だれだ。もしかして、イザナギさんか」
「いかにも」
イザナギさんは、あまり笑わず、この行動に気乗りしてないようだった。
「よかったな、大地にもイザナギさんが見えるんだ」
「ああ。なんか、うれしいよ。ナギとさぎりにだけ見えて、おれには見えなかったんだぜ、そのイザナギさんがおれの目の前にいるなんてよ。興奮するなって言うほうが無理だろ」
まあ、熱血漢の大地のことだ。こうして騒ぐことくらいわかってはいたが、うるさい。
「話は後だ。さぎりを助けに行く。それには、大地。おまえの家に祀られている家宝の剣があるはず。それを貸して欲しい」
「家宝の剣だって、そんなのあったかな」
「その剣がないと、さぎりを救えないんだ。持ってきてくれ、早く」
大地は思い出そうとしているようだが、記憶があやふやのようだった。頼りないなぁ。
「よく思い出せないんだよなぁ。かあちゃんにでも聞いてみる」
「イザナギさん。僕たちも行ったほうが早いんじゃないの」
「いや、俺は、あの家に入るのは、ちょっと好きじゃない」
と、この期に及んでまだいうのか、この男はっ。
「だからぁ、そういうこと言ってる場合じゃないでしょっ。いくよ」
無理やり引っ張って、ようやくイザナギさんと3人で大地の家に向かうのだった。