その指に触れて
「万梨子……」


あたしの肩に頭を乗せたまま、晃彦はぎゅっとあたしを抱き締めた。


「これって、あたしに慰めろってこと?」


いくらスキンシップが多いからと言ったって、慣れたわけではない。


いくら平然なふりをしたって、心臓の鼓動がうるさいのは否定できない。


「……ん」

「じゃあ、とりあえず話して」


「嘘着いたら即帰るから」と言ってやると、「わかってる」と苦笑し、あたしに促されて晃彦は口を開いた。


彼女の浮気が発覚したのは別れる直前。「私はどうせ晃彦の性欲処理係なんでしょ」という女の子に言わせるにはかわいそうなことを言われ、晃彦が捨てられる形で別れたという。


万梨子を裏切ったつけだな。晃彦は弱々しく笑った。


「わかってんなら、自棄になって他の女抱かないでしょ」

「確かに彼女との相性はよかったよ。週三でも飽きなかった」

「……気持ち悪い」

「でも、俺なりに好きだったんだけどな」

「それが彼女には伝わんなかったんでしょ」


あたしは平然なふりをしてため息をついた。


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