その指に触れて
「彼女いるくせに、何社会人の女と寝てんの? あたし言ったよね。あたしにしたこと、彼女にするなって」

「俺だって不本意だよ。浮気してきたのはあっち」

「アホくさ。浮気されたから浮気し返すとかばかでしょ。ほんと、やることにしか神経回ってないよね」

「やられたらやり返す。俺のポリシー」

「使い方間違ってる。彼女を取り返すことが最優先なんじゃないの? いじけて他の女抱いてる場合じゃないでしょ」

「もう、別れた」

「……は?」


あたしは鞄からバイブの鳴る携帯を取り出す。画面に見向きもせず電源を切って、再び鞄の中に押し込んだ。


「別れた。一ヶ月以上前」

「……嘘ついたんだ。昨日」


昨日のコイツの歯切れの悪さから、そろそろやばいのかなとは思ってたけど、既に別れていたのか。


「……なんかな。万梨子を前にしたらカッコつけたくなったのかな」


ベッドから降りて、晃彦はあたしの肩に頭を乗せた。あたしは抵抗しなかった。


付き合う前から晃彦はスキンシップが多かった。人懐っこいけど実は寂しがりやなのだと、以前言っていた。


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