その指に触れて
そんなことをしゃくりあげながら遥斗に話し、直後になんてことを本人に言ってしまったのだと恥ずかしくなって遥斗の頭を解放して、遥斗に背を向けてメガネを取って涙を拭った。


やばい、すっげー恥ずかしい。


思えばメガネ同士で泣いてたんじゃん。傍から見たら笑えるわ。うわっ、恥ずかしい。


「万梨ちゃん……」


ずびっと鼻を啜った遥斗を見て、あたしは慌てて自分の胸元を見る。よし、鼻水ついてない。


「帰ろっか」


涙の跡が残る顔で満面の笑みを作ることは痛々しい。


遥斗は立ち上がり、もう八時過ぎてるよと笑った。


「……遥斗」

「ん? あ、送ってくよ。夜道を女の子一人で歩かせるわけにはいかないしね」

「それはありがたいんだけど」

「なーに?」

「可愛くないよ、それ。あのさ、遥斗、なんでわかるの?」

「え?」


きょとんと大きな目が瞬きする。遥斗から鞄を受け取り、あたしは歩き出す。


「遥斗はなんであたしのこと、わかるの?」

「万梨ちゃん、わかりやすいもん」


遥斗はあたしの横に来てくすっと笑う。


「そう?」

「なんとなくね」

「ふーん……」


わかりやすいって、言われたことないんだけど。


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