その指に触れて
9.突き放すキス
そんなことがあったからって、あたし達の関係は何一つ変わらなかった。


好きと言うのは相変わらずあたしだけだし、「付き合おう」とあたしが言っても遥斗は相変わらず流すばかりだった。


あれから晃彦から誘いは一切なくなり、あたしと遥斗が触れ合うことも全くなくなった。


とは言っても、あたしは再び美術室に入り浸るようにはなったけど。


「あたし達、付き合おう」

「もうすぐテストでしょ? 勉強大丈夫?」


相変わらずあたしの言うことを流す男、遥斗。


「……数学的帰納法がわからないんだった」


しかもそれが解けないと赤点の危機だった……。


現実に戻されて、あたしはがっくりと肩を落とした。


「俺、数学得意。見せて」

「ていうかあんたに苦手科目とかないでしょ」

「あるよ。物理が苦手だから、化学と生物取った」

「あんたの苦手は苦手に入んないでしょ……」


苦手とか言って、こいつは普通に解いちゃうんだろうよ。


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