その指に触れて
「ここを突き止めたの、晃彦のツテでしょ」


遥斗が缶に口づける。ごくりと喉が鳴るのをあたしは缶のプルタブを開けながら眺めた。


「バレバレか」

「当たり前でしょ。おかしいと思ったんだよね、東京なんて嫌いだって前に言ったの聞いてたからさ、いきなり俺の住所教えろなんて」



遥斗と晃彦は結局、クラスは違えど仲良くなったらしい。話が今まで出会ったどんな奴よりも合うのだと、以前晃彦が話していた。


あたしは複雑な気持ちだったけど、仲がいいなら、まあいい。


「でも教えちゃうんだから、遥斗もお人よしだよね」

「ほんとだよ。いやんなる」

「相変わらずだよね、遥斗」

「万梨ちゃんもね」


ふう、とため息をついたのが聞こえた。


「いきなり来て帰すわけにいかないっての」

「わざと来た」

「だろうね。俺がいなかったらどうするつもりだったの?」

「帰ってくるまで待ってる」

「確実に襲われてたね。ここ、あんまり治安よくないんだよ」

「こんな高そうなマンションが?」

「外観だけね。家賃二万五千円」

「安っ」

「ここらへんは暴力団が時々通るんだよ。俺は男だからって適当な部屋に押し込まれたらこのザマ」

「何もされてないの?」

「いまんとこはね。夜中に外歩いてたら絡まれたって話も聞いてるから、夜中にはここらへん歩かないようにしてる」

「飲み会の時は?」

「誰かの家に泊めてもらう」


逆に家が危ないような、微妙なような。


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