その指に触れて
「お願いだよ~。万梨ちゃんだったら俺、うまく描けそうなんだよ」

「モデルによってうまく描けるとかあるの?」

「俺はあるよ。ちなみにさっきモデルだったかおりちゃんは、俺に対して好意剥きだしだったから、すごく描きづらかった」

「……あんた、やっぱり腹黒?」


こいつは描きづらい相手にあんな笑顔振り撒いて、食事の予定まで取り付けるのか。


ある意味尊敬するよ。


「わざわざモデルやってくれた子に嫌な顔をするのは失礼でしょ。俺なりの礼儀だよ」

「……あっそ」


どうでもいいけどさ、あんたの礼儀なんて。


「あたしは、あの子みたいに好意剥き出しじゃないから描きやすいってこと?」

「うん!」

「好かれてること、自覚してんだ」

「いや、かおりちゃんのあれは誰でもわかるでしょ。鈍いって言われる俺でわかったんだよ」

「……まあね」


顔に反さず鈍いんだ、こいつ。


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