その指に触れて
「じゃああたし、普通に立つ?」

「突っ立ってんの描いたって面白みがないじゃん」

「じゃあ、寝るか」

「いや、床汚いからそれはさすがに……って、万梨ちゃん」

「何?」

「何でブラウスの第二ボタン開けてんの?」

「え? ちょっと色気出して寝ようかなと。描くのは遥斗だから、途中で襲わないでね」


わざと煽ってみる。


「別に襲わないけど……って、スカートまで捲らないでよ。どう頑張っても腰から下は描けないよ。描いたらただの変態でしょ」

「え、違うの?」

「俺はモデルに欲情しません。何よりそんな絵、出せるわけないでしょ。美術の世界を何だと思ってんの」

「欲情しないのか、そうか、じゃあゲイなのか」

「万梨ちゃーん、そこ食いつかないでー。ついでにブラウスとスカートも元に戻してねー」

「なんだ、やっぱり欲情するんじゃん」

「そうじゃないんだってば!」


慌ててばたばたと顔の前で手を振る遥斗が可愛くて仕方ない。


遥斗をからかうの、すげー楽しい。


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