その指に触れて
5.全力で押し倒せ
次の日の放課後、美術室に行くと、遥斗は椅子に座って腕組みをしていた。


「何してんの?」

「ポージング」

「は?」

「座ってる絵じゃつまんないでしょ? どんなポーズにしようかなって」

「……あたしが?」

「うん」


要するに、あたしのどういうポーズをキャンバスに描こうか悩んでいるというわけか。


「どんなポーズでも、それをいかに美しく描くかが遥斗の仕事でしょ?」

「わかってるよ。でもデッサンみたいなポーズはさすがにダメでしょ」

「じゃあ、外行く?いろんなの見たら思い浮かぶかもよ」

「機材運び出すのめんどい」

「じゃあ、この教室の中であたしにポージングしろと?」

「そういうこと」

「雰囲気がない……しかも何なの、この男」


意外にめんどくさいな。


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