その指に触れて
遥斗はわかっていた。


弱いな……あたし。


「万梨ちゃん」


遥斗が微笑む。


「明日も来てよ」

「……いいの?」

「嫌なわけないでしょ。だったらわざわざ言わないよ」

「ほんと?」

「ほら、また嫌って言わせないようにする」


顔をしかめて遥斗が歩き始める。


「じゃあ、なんて言えばいいのよ」


慌てて遥斗の隣を確保した。


「普通に言えばいいの。会いたいからって」

「い、言えるかっ!」


遥斗の背中を叩くと、「いてっ」と声を漏らした。


遥斗はたぶん何も考えずに喋っている。


普通の人ならSだと思う発言も、あたしが遥斗を好きだと思って遥斗は喋っていないだろう。


なんせ草食だから。


遥斗は純粋にあたしのダメなところを指摘してくれてるのだ。


それでも嬉しい。


それだけで満足だ。


顔が緩む。


あたしはにやけたまま遥斗に体当たりしてみた。


「うわっ」て声を上げて、遥斗がよろめいた。


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