この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「ショボイ胸しやがって、偉そうなこと言うな!」
「じゃあ、聞きますけどねぇ、そのショボイ胸を触って喜んでたのは、どこのどいつよ!」
私が怒鳴ると銀は偉そうに胸を張り、悪びれる様子もなく自信満々な顔で言う。
「俺だ! 文句あっか?」
あっさり、認めた……
「そ、そうよ。銀が悪いんだから……」
そんな素直になられると、なんか調子狂っちゃう。
と、その時、交差点のど真ん中に居る私たちに向かって、一台の車がクラクションを鳴らしながら猛スピードで突っ込んできたんだ。一瞬、恐怖で体が固る。
「ミーメ!」
銀が私の腕を掴み引っ張ると、そのすぐ後ろを暴走車が通り過ぎて行く。
私たちは風圧で道路に倒れ込むが、銀の腕に包まれた体は少しの痛みも感じなかった。
「ぎ、銀、大丈夫?」
泣きそうになりながら銀の顔を見下ろすと鋭い目で走り去った車を睨んでる。
「銀?」
「ミーメ、車に乗れ」
「えっ?」
「いいから、車に乗るんだよ!」
そこから別の意味の恐怖が始まったんだ――
「ぎーん! もう止めてぇ~死ぬぅー!」
「うるさい! 気が散るから黙ってろ!」
「あ~ん、チビりそ~」
「バカ! 車の中でチビったら罰金だからな!」
さっきの車を追いかけ、プラチナシルバーメタリックのポルシェが街を疾走する。銀の理性はブッ飛び、車道はサーキットと化していた。
「よし! 追いついた!」
「ど、どうするつもり?」
すると銀は不気味な笑みを浮かべ、舌なめずりをしながら「八つ裂きにしてくれる……」なんて言うから、私の恐怖は十倍増し!
ひぇ~神様、仏様、ご先祖様、お地蔵さまーっ! 誰でもいいから、銀を止めてー!