この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

ショックを受けた銀は、午後からの競技を見ることなく、怜香さんの婚約祝いの食事会があるからと早々に帰って行った。


運動会が終わり『エデンの園』に帰ると気の早いおかまちゃんたちが、私の"プロポーズ記念"だと言って、パーティーを催してくれた。


結局、なんだかんだと理由を付けて飲みたいだけなんだろう。盛り上がり出すと私のことなんて無視。まぁ、いつものことだ。


華が眠そうにしてたので、私は華を連れ部屋に上がり、ふたりでお風呂に入る。


華の体を洗いながら、それとなく聞いてみた。


「ねぇ、華、あの約束のことだけど……あれは華から言ったの?」

「うぅん。違うよ。あれはパパが言ったんだよ。ほら、華とパパが初めて公園でかけっこの練習した時、華がミーメさんに練習したくないって言って泣いたでしょ? あの時、パパがコッソリ言ってくれたんだ。

"ハナコがかけっこで一等取ったら、ミーメを俺の嫁さんにしてやるぞ"ってね」


あ、そうだった。泣きじゃくる華に銀が何かを言って、急に華の態度が変わったんだ。


「だから華、一生懸命練習して頑張ったんだよ。でも、パパが運動会来ないって言うから諦めてた……」

「機嫌悪かった理由はソレ?」

「うん。だって、パパの目の前で一等にならないとダメだと思ったんだもん。なのに、華が転んでビリになってもパパは約束を守ってくれたんだよ!」

「そっか~でも、華は銀が大好きだったのに、それで良かったの?」


すると華はニッコリ笑い、大きく頷く。


「仕方ないじゃん。パパとは結婚出来ないし、よく考えたらさぁ、彼氏だと別れることあるけど、パパなら一生、傍に居れるじゃない。永遠に一緒ってことでしょ? そっちの方がいいかもって思ったの」

「なるほど……」


永遠ときたか……実にポジティブな意見だ。


「華、足のキズがしみるからもう出るね」

「あ、うん」


静かになったバスルームで、不覚にも泣いてしまった。


まだ赤ちゃんみたいなつもりでいたけど、私が思っている以上に華は成長してたんだ。嬉しくもあり、寂しくもある。なんだか、しんみりしてしまった。


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