この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

本当は、銀にもっと聞きたいことがあったんだけど、お昼休みと言うアナウンスを聞き、皆の所に戻ることにした。


いよいよ私の力作のお披露目だ。


「ミーメちゃん、お腹すいた~早くお弁当出して~」

「はいはい」


騒ぐおかまちゃんたちに急かされ、皆の喜ぶ顔を想像しながら自信満々でお弁当のフタを開ける。


「ジャ~ン! どう? 私の作ったキャラ弁」


大絶賛される予定だったんだけど……あれ? どうして皆、無反応?


華が眉をひそめ、銀が手に持っていた割り箸をポトリと落とす。


「ミーメ、このキャラ弁のテーマは……なんだ?」

「よくぞ聞いてくれました! 『不思議の国のアリス』だよ~ん」

「これが……この潰れた団子みたいなのがアリスか? そして、こっちの耳の長いブタが……ウサギ?」

「えぇ~! それ酷くない? ねぇ、皆?」


同意を求めるが、誰もフォローしてくれない。唯一、横田さんだけが恐る恐る箸を付けてくれた。でも、その手は確実に震えている。


そして、銀が静かに呟いた。


「ミーメ、お前に旨い料理は求めない。味噌汁だけ作っていればいい……」


全員が大きく頷く。


でも、さすがにお腹がすいてきたのか、皆が顔を歪めながらお弁当を完食してくれた。で、銀がつまようじでシーシーしながら不思議そうに聞いてきたんだ。


「さっきから気になってたんだが、どうして橋倉君が居るんだ?」

「え゛……」


ソレを聞くか? でも、いずれはバレることだよね。


「実は、橋倉さんは……」


私が言いかけたのと同時に橋倉さんが喋りだす。


「私、横田さんと結婚することになりまして……神埼さんの母になりますの。なので、華ちゃんは孫。今日は、おばあちゃんとして応援に参りました」


青ざめる銀。


「ちょっと、待て……と、言うことは?」

「はい。神埼さんが部長と結婚しましたら、私、部長の母になります。どうか末永く宜しくお願い致します」


銀の持つつまようじが、パキッっと音をたて折れた。


「……ミーメ、結婚は無かった事にしてくれ」


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