この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「私ひとりになって売上下がったらクビにされるかも……」
私の話しを聞いた銀之丞は何を思ったのか、突然、白衣を貸してくれと言い出した。
「よーするに、この総菜を全部売ればいいんだろ?」
全くもってそのとおりだけど、そんな簡単に言ってほしくない。結構、苦労するんだから。
「俺が売ってやるよ。お前は他の仕事しろ」
「な、何言ってんのよ!」
私が怒鳴ってる横から桃ちゃんが銀之丞に白衣を渡してる。
「ちょっと、桃ちゃん、こんなヤツに任せたらダメだって! それに、従業員でもないのに店長にバレたら……」
「あら、いいじゃない。面白そう」
マジっすか?
ビビッてる私を尻目に、銀之丞は白衣を着ると周りに居るお客さんに声を掛ける。
「そこの綺麗なお姉ぇさん、コレ美味いよ」
声を掛けられた中年女性の表情が見る見るうちに緩んでいく。
「あら、じゃあ頂くわ」
まるで呼び込みのホストの様だ。あっという間に、おば様方の黒山の人だかり。ものの数分で完売。
値引きもしてないのに……恐るべき銀之丞。男前パワーに脱帽!
「へぇ~、驚いた。ねぇ、君、良かったらここでバイトしない?店長には私から言っとくからさ~。ミーメちゃんひとりに任せるのは心配だし。明日からどう?」
桃ちゃん、強引だ……それより、私より銀之丞を信頼してることにショック。
「いいけど」
これまた、アッサリ承諾してるし……
桃ちゃんと銀之丞が、まるで以前からの知り合いみたいにタメ口でやたら盛り上がってる。
あのぉ~私も居るんですけど……