この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

終礼が終わると私は急いで銀の元に走る。


「ぎ…あっ、部長。報奨金のこと、橋倉さんに聞きました。有難うございます」

「んっ? あぁ……どうせ、今も貧乏なんだろ? 俺からの就職祝いだ」


銀……昔からそうだ。時々、こうやって優しくしてくる。ズルい人……


「あ、そうだ。今日、俺は残業する。お前は補佐なんだから残って手伝えよ」

「残業?」


困ったな。華、大丈夫かな? まぁ、キャサリンママが居るから平気だろうけど……




残業と言っても特に何をするでもなく、部長室で銀がチェックした資料の整理をするくらい。


残業を始めて1時間ほど経った頃だった。部長室のドアを誰かがノックした。


入って来たのは橋倉さん。頬を染めモジモジしながら銀のデスクの上に大きな風呂敷包みを置く。


「なんだこれ?」

「あ、あの、残業でお腹すいてるんじゃないかと思いまして……差し入れです」

「ほーっ」


銀が風呂敷を解くと朱色の重箱が現れ、その重箱の中には、おにぎりがギッシリ詰め込まれていた。


ゲッ! おにぎりだらけ。おかず無し。


「部長はシャケのおにぎりがお好きと聞きましたので、心を込めて握らせて頂きました」


うっそ! あの遅刻の言い訳を覚えてたんだ。


「シャケ?」


銀がキョトンとしておにぎりを眺めてる。


ヤバい。嘘がバレる。


私は慌てて大声で「部長、シャケ好きですよね?」と叫ぶ。


「はぁ? 嫌いじゃないが…」

「嫌いじゃないってことは、好きってことですよね?」

「まぁ……な」

「ですよね~好きに決まってる! 絶対好きですよ! 好きって言って!」

「……す、好き」


よし! "好き"頂きましたー!


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