この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
橋倉さんは上機嫌で帰って行き、なんとか上手く誤魔化せた。
銀は未だ訳分からない顔をしておにぎりを食べてる。
「なぁ、俺、シャケのおにぎり好きだったっけ?」
「知らないよ!」
橋倉さんが帰ってしまえば、そんなことどうでもいい。すると私の携帯がポケットで震えだした。
わっ! キャサリンママからだ。
銀から少し距離を取り、携帯の通話ボタンを押すとキャサリンママのドスのきいたデカい声が耳を劈く。
『ミーメちゃん、大変よ! 華ちゃんが階段から落ちて腕が痛いって泣いてるのよ』
「えぇーっ! 華が怪我?」
『すぐ帰って来れる?』
「分かった。すぐ帰る」
携帯を切り、銀に帰らせて欲しいと頼むと――
「"はな"って誰だ?」と聞いてくる。
「は、華は、その~あ、橋倉さんです」
「はぁ~? 橋倉君? いつから橋倉君のことを"はな"って呼ぶ様になったんだ? しかも呼び捨て……」
「ぐっ……」
「それに橋倉君は今、出てったばかりだろ?」
「だ、だからぁ~今、橋倉さんが会社を出たとこで転んで怪我したみたいなの」
「で、なんでお前の携帯に連絡がある?」
「そ、それは、橋倉さんが一番頼りにしてるのは私ってことなのよ」
「へぇ~……」
これ以上話してたら絶対ボロが出る。私は銀を残し部長室を飛び出すと全力疾走。
やっぱり残業なんてしないで帰れば良かった。
華ぁ~ごめんね。今すぐ帰るからね。
華が心配で生きた心地がしなかった。