かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
お母さんとおばあちゃん、もしかして怒鳴り合いの口論とかになったりしていないよね……。

やっぱり多くは語ってくれないけれど、民宿に戻ってきたときの空気は相変わらず張り詰めたものだったから、そんな想像をしてしまった。


間宮さんに話を聞いてもらって、元気づけられて、ちゃんと自分の気持ちを伝えようと決めたのはいいものの、果たして今がそのタイミングなのか、とたんに分からなくなる。

こんなに疲れ切っているお母さんに「あたしはこの場所が好きだ」と言うことは、今までため込んできたやり場のない気持ちに追い討ちをかけることになるんじゃないか。

そう思うと、あれだけ勇気づけられた間宮さんの言葉の数々も、みるみるかすんでいく。

すると。


「好きなの?」

「……えっ!?」


ひとつ大きく息を吐き出したお母さんが唐突にそう聞いてきて、あたしは思わず、大げさなくらい過敏に反応してしまった。

けれど、そんなあたしの様子には構わず、お母さんは淡々とした口調で言う。


「おばあちゃんとか、民宿とか、やたら多い坂とか、さびれた港町とか、そういうのを全部ひっくるめた田舎。……好きなの? 菜月は」
 
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