かけぬける青空は、きっと君とつながっている
特別な偶然
民宿に戻ると、お母さんは談話スペースのソファーに深く座って額に手を当てていて、台所のほうからは、おばあちゃんが夕ご飯の準備をしている音がせわしなく聞こえてきた。
間宮さんとあたしはちらりと視線を合わせ、特に示し合わせたわけではないのだけれど、間宮さんは2階へ上がる階段のほうへ、あたしはお母さんのところへと、それぞれ向かう。
お母さんの隣に腰を下ろすと、少し顔をのぞき込むようにして聞いてみる。
「今日は泊まるの……?」
「そうなるわ。もう新幹線の時間に間に合わないもの、ここに泊まるしかないでしょう」
「そうだよね。ごめん」
額にやっていた手を離してあたしを見たお母さんは、ひどく疲れきった様子でそう言う。
あたしたちが出かけていた間におばあちゃんと何を話したのかは分からない。
けれど、お母さんのその様子は、とても痛々しく、胸が締めつけられるように痛い。
そんなお母さんに申し訳なく思いながらも、間宮さんの言葉を胸に、意を決して聞いてみる。
「……おばあちゃんとは何を話したの?」
「いろいろと込み入った話をね、したのよ」
「そっか。あたしには話せない?」
「……ちょっとね」
「分かった」