かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
あんなに待ち望んでいた夜が、ようやく明けかけてきているというのに、夜明けなんて来なければよかった……と、即座に思う。

ほとんど眠れなかっただろう夜を明かし、白みはじめた空に集会所から出てきた人たちも、車で一夜を過ごした人たちも、変わり果てた街の様子を眺めては、誰もが言葉を失っている。


無言で手を合わせる人がいた。

泣き崩れ、嗚咽をもらす人もいた。

ただ呆然と立ち尽くしている人がいた。

手を震わせながら携帯で写真を撮る人もいる。


誰もがみな、この変わり果ててしまった街を現実だとは受け止められず、そういう俺も、夢であったらいい、どうか夢であってくれ……と、しっかりと両の目で見たこの期に及んでまで、まだ信じたくない気持ちが勝っている。

往生際が悪いとか、現実逃避だとか、そういう言葉で片づけられないのだ、どうしても。


なんなんだろう、人間って……。

漠然と思う。

いくら文明が発達し、防波堤や防潮堤を高く築き上げられたとしても、ひとたび自然が牙を剥けば、その威力の前では文明の利器はことごとく無力なものでしかなく、いとも簡単に人や街を飲み込み、俺たちに絶望を与えていく。

本当に、人間とはなんなのだろうか。
 
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