かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
それからちょうど2年が経った今年の夏、俺はこうして、秀斗や仲間を連れて、かねてからの約束を果たすために旅に出る決心をしたわけなのだが、まさか旅の第一歩目のこの町でひと夏を過ごすことになろうとは、日本地図を広げていたときからは思いもよらなかった。

完全に誤算だったと言ってもいい。


そして、俺の長時間にもわたる取り留めのない話をじっと聞いている隣の彼女に対しての、この不思議と全部を話したいと思う気持ち。

たかが1ヵ月の短い間に、本当に厄介な気持ちになったものだとつくづく思う。


彼女に対しては、何も告げずにひっそりと町を離れるつもりではいるが、きっと、どうして見送らせてくれないの、と泣きもするし、おそらく怒りもするのだろうと思うと、町を離れがたい気持ちになるのも、けして嘘ではない。

ただ、前に一度、彼女にも言ったように、俺たちはいくら仲良くなろうとも、民宿の人間とその客、という線引きからはお互いに踏み込んではいけないのだ、とも思う。


そういう“想い”はいずれ、思い出に変わる。

彼女も、俺も、きっと。

きっと。


深く息を吐き、俺は言う。


「……て、ことだ」


と、いつもの調子で。
 
< 330 / 423 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop