かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
間宮さんの“3.11”を聞いたあたしが、それをどう感じるかや、命の儚さや重みを自分自身の中に掘り下げ、消化し、さらには、この先をどういうふうに生きていこうと思うか。

それがおそらく、今のあたしが一番に考えるべきことなのではないだろうか、と思う。


それを間宮さんは、自分の過去を語ることで教えてくれたのだ、と解釈すれば、間宮さんと出会えたこの夏は偶然なんかじゃなかった、と。

完全にあたしの願望だけれど、何かしらの必然性のもと、汐凪で出会い、ひと夏を一緒に過ごすことができた、とすることができる。


「お前、ほんっとに変なやつだよな」


すると、ふいに間宮さんが言った。

間宮さんの静かで穏やかな口調は、全てを話し終えて心の中が少し軽くなったからだろうか、月明かりに照らされ、キラキラと輝く目の前に広がる海のような、とても優しい声色だ。

その声にじっと耳を傾けていると、間宮さんは再び写真立てをあたしに渡し、こう続ける。


「なんでだろうな、お前といると、心が優しくなれる気がする。俺のことを知ってほしいと思うし、お前のことも、もっと知りたいと思う。まさか俺にもこんな気持ちになれる日が来るなんて、旅に出た頃は思ってもみなかった」
 
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