かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
「あたし、間宮さんが好きです」

「だろうな」


真っ直ぐに見つめて言い切ると、間宮さんは、専売特許だというお決まりの顔をする。

けれど、次の瞬間……。


「俺もだってこと、教えてやろっか」


ふわりと視界が揺れて、抱きしめられているのだと気づいたのと同時に、耳元でそんな甘ったるい台詞がささやかれる。

間宮さんめ。

こんな甘い台詞も言えたりするんだ……。

びっくりしたけれど、嬉しいような、それでいて、なんだか悔しいような、複雑な気持ちだ。

それでも、あたしには、間宮さんがまたこの町に訪れたときに伝えたい言葉があった。


「おかえりなさい」

「……ただいま」


その直後、左頬に、むにゃっ……とした感覚があって、ほっぺたにキスをされたのだと悟る。

しかもそれは、2年前、間宮さんと“導きの蛍”を見に行ったあと、疲れ果てて居眠りをしてしまったときに夢見心地で感じた、あの感覚と同じで、ああ、あのときも間宮さんはあたしのほっぺたにキスをしていたんだ……と。

そこでようやく、あれは夢ではなく、現実に起こったことだったのだと理解した。

真相が分かるまでに2年かかったけれど、それもまた、間宮さんの優しい意地悪なのだと思えて、否応無しに頬が緩むあたしだった。
 
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