かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
音楽室は相変わらず騒がしい。

みんなそれぞれに席を移動しておしゃべりに花を咲かせているから、あたしが泣いたことも、明梨とこんな話をしていることも、騒がしさの中にすっかり飲み込まれている。


「それでね、好きって言えないまま終わっちゃったんだなぁ、って思ったら、なんだか泣けてきちゃって。自業自得なのにね」

「菜月……」


なんとも言えない表情の明梨に少し笑って、あたしは受け取った手紙をポケットの中に戻す。

悔しいとか、告白しておけばよかったとか、そういう気持ちは不思議とない。

明梨に全部を話して胸につかえていたものが取れ、むしろ今は、彼女ができてもあたしを忘れず手紙をくれたことが素直に嬉しい。


「ハルに返事、出さなきゃね」

「行くの? 手伝いに」

「うん。おばあちゃん1人で民宿やってるし、手紙にも来いって書いてあるしね。行くよ」

「そっか」





結局、中身は自習のようだったこの日の授業では自由曲は決まらず、1学期最後の授業で慌ただしく決まることになった。

夏休み明けに1ヶ月ほど練習をして、10月の頭に校内合唱コンクール、という予定だ。

こうして、ほどなくして夏休みに入り、失恋したてのあたしの、高校2年の夏がはじまった。
 
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