【完】ヒミツの恋を君と。
その晴の様子を見て思わずひとりでフッって笑ってしまった。



いいことする時ぐらい、明るくすればいいのに。

席を立つ時もどう見ても無言で立ち上がってたし、おばあさんのお礼にもニコッとしてるような感じはなかった。



今、ドアにもたれて立ってる晴は、目を閉じて、俯いてる。




寝たふり?

照れてる?




周りの人は誰もおばあさんに席を譲ろうとしなかったのに晴だけは違った。

晴の優しさを見つけることが出来てものすごく嬉しい。




心がふわふわっと温かくなる感覚。





それと同時に晴が男の人しか好きになれない、リアルなBLだったら嫌だなって思った。

どうしてこんな風に思うんだろう?

おかしいよね。最初は晴の秘密にワクワクしてたはずなのにな。




電車は、あたしのひとり暮らしの家の最寄の駅に停車した。




ここじゃないよね?

そんな風に思ってたのに。



あれ?晴がいない!!


慌てて電車のホームに視線を移すと、晴はもうホームの上にいて、改札に続く階段に向かって歩いていた。







あ、あ、危ないとこだった!


扉が閉まってしまう寸前であたしもホームに飛び降りて、間一髪セーフ!




あれ?晴は?

慌てて階段に目を移すと、もう上まで上りきってる!




うぉぉおぉぉぉ──!




全速力で階段を駆け上がった。




でも、ここの駅に高校生の塾なんてあったっけ?

自宅?もしかして近所だったりして?




改札を通り抜ける晴の後姿を見つけたけど、すぐに右に曲がってあたしの視界から消えた。



あぁ、もう足早いな!


無駄に長い晴の足に、理不尽にキレながら、さっき晴が曲がった細い路地を曲がる。

その路地のずっと先にその後姿が小さく見えた。


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