月宮天子―がっくうてんし―
「きゃーーーー!」


叫び声コンテストで優勝できるんじゃないか? というくらい凄い声量だった。

愛子自身、自分にこんな大きな声が出るとは思っても見なかった。普通、叫べなくなるというから、まあ、悪いことではないだろう。


「あ、あの……」

「キャーキャーキャー!」

「ちょ……あ」

「きゃあぁぁっ!」


これだけ大騒ぎしていれば、ほんの数メートル先には駐在所があるのだ。

当然……。


「どうした! 君、大丈夫か? おい貴様っ、その子から手を離して、両手を上げて後ろに下がれっ!」


警官はなんと拳銃を抜き構えている。

猟奇的な殺人事件が続いているので、かなり神経がピリピリしているようだ。


事実、私服警官も拳銃の携帯命令が出ており、いつでも抜ける体勢でいられるよう、通達も出ていた。

パニックを避けるため、マスコミ報道には規制が掛かっていたが……実のところ、このまま無差別殺人が続けば、戒厳令すら出かねない程、逼迫した状況だったのである。


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