月宮天子―がっくうてんし―
「朔夜様は『まったき穢れなき処女(おとめ)』であられる。気高く美しく……だが、お前は……普通だな」

「あんた喧嘩売ってるの?」

「いや……普通の娘と、普通に生きる人生を……想像してみただけ、だ」


愛子はドキドキし始める。

いや、まさか……いや、でも。


「あの、それって」


きつい口調でニコリともしたことのない男が、愛子を見てふわっと笑った。


「俺はやはり……ヒーローなる器ではなかった、らし」


木の枝に両腕を吊るされたまま、蓮の首がガクンとうな垂れる。


「ちょっと、レン! レンッ! 冗談よね? カイが助けに来るまで生きててよっ」


愛子が叫んだとき、白露の嘴がコツコツと愛子の頭を突いた。


「そろそろ来たみたいだよ。『月宮天子』がね」


そう言うと白露の頬がニヤッと笑った。……たぶん。


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