月宮天子―がっくうてんし―
海は氷月を睨んで言った。


「宝玉を渡す前に、愛ちゃんと蓮さんを、自由にしてやってくれ」

「そうはいかないな。あの巫女も『紅玉』を持ってるはずだ」

「『紅玉』ならここにある」


海は水晶のケースに収まった『紅玉』をジーンズのポケットから取り出して見せる。そして、ケースの蓋をカチッと開けた。


「そら、欲しいんだろ? 取りに行けよ!」


言うなり、海は素手で『紅玉』を掴んだ!?

そして、湖のど真ん中に向かって思いっきり投げたのだ。


「なっ!」

「あんたがなんに化けるのかは知らないが……ほら、『取って来い』くらい、犬でもできるだろう? 飛び込んでみろよ!」

「――貴様!」


氷月は金色の髪を逆立て、怒りを露にしている。愛子もびっくりだ。なんか海がワイルドでカッコよく見える。


(ど、どうしちゃったの!?)


でも、一番怒ったのは愛子の捕まえていた白露だった。


「『月宮天子』の分際で、若様になんてこと言うんだい! あたしが承知しないよっ!」


白露は愛子を放り出し、足を引き摺りながら海に向かって行こうとする。

飛ばないのか飛べないのか……たぶん飛べないのだろう。羽を広げるが威嚇しかできないみたいだ。


「――斬(ザン)ッ!」


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