月宮天子―がっくうてんし―
微妙な愛子の間違いは軽く無視され、女は一歩前に踏み出す。
その瞬間、ダッと愛子は身を翻した。
行き止まりだが家はある。ブザーを押して大声を出せば騒ぎになるだろう。ひょっとしたら、近所を警戒中の警官が駆けつけて来てくれるかもしれない。
だが、ほんの三歩も走っただけで、なんと女は軽く愛子を飛び越え目の前に降り立ったのだ。
動転して立ち尽くす愛子の首を、女の右手が捕えた。
見る見るうちに爪が伸び、五本あった指が四本に減っていく。長く鋭い鉤爪が愛子の喉元に巻き付き、簡単に締め上げた。
でも顔は人間のままだ。
右手だけ変化している。どうやら、この間のホワイトタイガーの子供より、数段手ごわそうな敵だった。
「さ、お嬢ちゃん。あの緑の坊やをお呼びよ。確か、せとないかい、とか言ってたかねぇ」
その言葉で、この女があの美少年……流火の仲間だとわかった。
流火に海の名を「せとないかい」と教えたのは愛子である。
愛子は迷ったが、海の携帯を登録した短縮番号を押した。
海ならあのときのように、緑の戦士に変身してこの女をやっつけてくれると思ったからだ。
通話中になった瞬間、愛子は海の名を呼んだ。
「カイ! カイ! カイ、助けて!!」
『やーん、カイさんたらぁ』
なんと、電話から聞こえた声は……姉、直子の声! しかも、妙に甘えたような猫なで声に、愛子は硬直する。
その瞬間、ダッと愛子は身を翻した。
行き止まりだが家はある。ブザーを押して大声を出せば騒ぎになるだろう。ひょっとしたら、近所を警戒中の警官が駆けつけて来てくれるかもしれない。
だが、ほんの三歩も走っただけで、なんと女は軽く愛子を飛び越え目の前に降り立ったのだ。
動転して立ち尽くす愛子の首を、女の右手が捕えた。
見る見るうちに爪が伸び、五本あった指が四本に減っていく。長く鋭い鉤爪が愛子の喉元に巻き付き、簡単に締め上げた。
でも顔は人間のままだ。
右手だけ変化している。どうやら、この間のホワイトタイガーの子供より、数段手ごわそうな敵だった。
「さ、お嬢ちゃん。あの緑の坊やをお呼びよ。確か、せとないかい、とか言ってたかねぇ」
その言葉で、この女があの美少年……流火の仲間だとわかった。
流火に海の名を「せとないかい」と教えたのは愛子である。
愛子は迷ったが、海の携帯を登録した短縮番号を押した。
海ならあのときのように、緑の戦士に変身してこの女をやっつけてくれると思ったからだ。
通話中になった瞬間、愛子は海の名を呼んだ。
「カイ! カイ! カイ、助けて!!」
『やーん、カイさんたらぁ』
なんと、電話から聞こえた声は……姉、直子の声! しかも、妙に甘えたような猫なで声に、愛子は硬直する。