部長とあたしの10日間
「ふぅん」


後藤さんもその失礼な作り話をあっさり受け入れてるし。
部長も後藤さんも、落ち着いているようで結構すっとぼけてるようだ。


それにしても、二人きりでいたのに疑われもしないなんて。
あたしと部長はそんなに釣り合っていないのだろうか。
女としてダメ出しを食らった気分で恨めしそうに部長を見ると、後藤さんがふと思い付いたように言った。


「櫻井さん。
自販機でコーヒー1杯付き合ってよ。
移動が長くて疲れちゃった」


別に後藤さんに付き合うのは全然いい。
全然いいけど、この流れでさっきのデートの件がうやむやにされそうな予感が…。
あたしが恐る恐る部長の顔を見ると、


「行ってこい、行ってこい」


案の定、部長はパタパタと手を振ってあたしを追い払う。


何よそのホッとした顔。
うまく厄介払いできたって、しっかり書いてあるんですけど。
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