部長とあたしの10日間
「でも…」


デートの約束を取り付けるべく、もう少し部長と一緒にいたいオーラを前面に押し出したのに、部長は眉間に皺を寄せてこっちを睨む。


「聞こえないのか?
行ってきてくれ、と頼んでるんだ」


うわ出た、お得意の高圧的態度。
だからそれは頼んでるって言わないんだってば。


「…分かりました」


と思いつつも素直に受け入れてしまうあたし。
どうやら知らぬ間に完全なMに調教されたようだ。


部長の意地悪。
あたしは部長を恨みがましい目で見つめながら、しぶしぶ腰を上げた。


「ーーーはい、付き合ってくれたお礼」


後藤さんが差し出してくれたコーヒーを、あたしは会釈しながら受け取る。


「見ました?
さっきの部長の、厄介払いできて嬉しそうな顔」


あたしが口を膨らませて言うと、後藤さんは苦笑した。


「ああ見えて、結構子供だよね」
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