部長とあたしの10日間
そーっとドアを開くと、そこは少し見覚えのあるリビングで。
ソファーに腰掛けてテレビを眺めていた部長が、あたしに気付いてこっちに目を向けた。


「───あぁ、起きたか」


あたしもまさか、こんなにぐっすり寝てしまうとは思ってなかった。
どうやら高級ベッドはあたしには寝心地が良すぎるようだ。


「───夜中に目を覚ましたとき、お前の寝顔が目の前にあったから驚いた」


部長は昨夜の泥酔がまるで夢だったように、いつも通りの澄ました顔でそう言うと。
新しくカップに注いだコーヒーをあたしに差し出してくれた。


「…すみません。
あたしも寝ちゃったみたいで」


あたしは温かいコーヒーを受け取りながら、改めて部長を見る。


部長の私服姿を見るのは初めて。


上質なものに違いないとは言え、シャツとニットを重ねただけのシンプル極まりないコーデ。
それなのにセンス良く見えるのは抜群のスタイルのせいだろう。


「和樹から聞いたよ。
酔い潰れた俺を、お前が送ってくれたんだってな」
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